群馬県高崎市にある生物建築舎の事務所に温熱環境の実測に行ってきました。

10月23日、東京から群馬にかけて日中快晴でした。日の出は必ず曇り、太陽と霧がゆっくり混ざり合うような、私の住んでいる京都の福知山とは異なり、関東の秋の朝はからりと晴れた晴天であるような気がします。

天神山のアトリエは鉄筋コンクリート打ち放しの壁に、東西南北に対して開いたフィックス窓、屋根は全面天窓という建築です。一見すると夏は暑く、冬は寒くなるだろうと予想されますが、実測をした時間帯の10時から15時まで太陽が出ていて日差しが注ぎ込んでいたにも関わらず、室内は常にひんやりと涼しい感じがしました。
この原因は植物が日射を遮り、人がいる空間まで室温が上がらないことだと考えています。ここに加えて植物が蒸散を行い、その時に発生する潜熱によって気温が下がることから、気温が上がりにくい建物になっていると考えられます。言ってみれば植物がエアコンのような働きをしているのではないかと考えており、今回実測をさせていただいた理由でもあります。また、外壁に這っているツタ植物も温度上昇を抑制する大きな一因のようです。

では日射が遮られているなら室内は暗いかというと、決してそうではありません。天神山のアトリエの屋内は低くても1000ルクスを超え、勉強灯をつけた時程度の明るさを確保できていました。生物建築舎の勤務時間内であれば十分な明るさを確保できるようです。どうしても明るさが足りない場合は、建物内に唯一存在する裸電灯をつけて作業をしているとのこと。
また常時マスクをしていたのでよくわかりませんでしたが、感染症が蔓延する前はドアを開けるたびに季節折々の植物の香りがしたのだと思います。特にレモンユーカリはゆするとさわやかな匂いがするとのことで、人が動いたり、建物内に風が吹き抜けるとユーカリのさわやかな匂いと共に時間が流れたと思われます。

植物や自然とともにある建築ならではのハプニングも起こるようです。
今年の群馬では雹が降り、外壁をおおっていたツタの一部が剥がれてしまいました。そのため今年の夏は日射がさえぎられず少し暑かったそうです。またツタの種の殻が雨のように落ちてきて書類が殻の中に埋もれたり、鳥が中に巣を作ってヒナが巣立つこともあるそうです。
結露も発生しやすいとのことで、実測時にも何度か水滴が落ちてきました。植物が蒸散し、熱を奪ってくれる一方で、天窓に結露を形成してしまうようです。これを防ぐために換気扇を回しているそうです。
またこの建物は断熱材が入っておらず、土の床がむき出しのため冬になると底冷えするような寒さが訪れるとのこと。なので冬は無理せずに早めに業務終了となるのだとか。建物の環境に合わせて働き方も変えるという柔軟さがとっても新鮮でした。


実測にご協力頂いた、藤野高志さん、生物建築舎の皆様、ありがとうございました。
